スティーヴ・ジョブズ課題
以前からお話しているように夏期講習期間、数名の生徒がスティーヴ・ジョブズ課題に取り組みました。3つ課題に取り組んだのですが、最後の1つは「ロスト・インタビュー」というインタビュー映画の一部を視聴しスティーヴ・ジョブズが語っている「お金」「チーム」「未来を予想する力」「コンピュータを作る目的」「優秀さ」のトピックから3つを選び、その考えを自身の人生でどのように生かすか200-240wordsのエッセイを書くというものでした。
この動画です。私がこの動画に出会ったのは10年程前なのですが、感動したのでDVDを購入しました。(スティーヴ・ジョブズだけに影響を受けたわけではなくフェスブックの創設を描いた「ソーシャル・ネットワーク」も購入し観ていますし、パソコンの生みの父アラン・チューリングの半生を描いた「イミテーション・ゲーム」という映画も購入し観ています。ドイツ国営放送のレオナルド・ダ・ヴィンチの『モナリザの謎』を描いたドキュメンタリー映画なども見ています。)
中学生の生徒や、入塾後日が浅い生徒にこの課題をやりなさいといってもうまくいかないでしょうが今回この課題に取り組んでいるのが入塾して半年や1年、長い生徒では3年ほどGRITに通ってくれている生徒で意図もわかって取り組んでくれているので本当にありがたいです。
一生懸命取り組んでくれているので「今年もやって良かった」と感じました。
あなたは優秀ですか?
いくつかのトピックの中で『優秀さ』というトピックを選び英作文を書いている生徒が多かったです。「優秀さ」という言葉は、日本人的感覚では鼻につく少し嫌味な言葉ですが英語の"excellent"はポジティヴな、素敵な単語です。映画「スティーヴ・ジョブズ」の中でもエンジニアを引き抜く際に「君は優秀か」と質問していたシーンを覚えている生徒もいるかもしれません。
また、ケンブリッジ大学の法学部の入試問題では「あなたは利口ですか」というトピックの問題が出題されたことがあるようです。日本人的感覚では謙遜し「いえいえ、私なんか…」という回答が一般的でしょうが「ハーバード大学の学生は卒業までにA4用紙50キロ分をライティングしているようです。私は高校3年間でA4用紙100キロ分ライティングし、オールA、首席で高校を卒業しました。したがって私はハーバードではなくケンブリッジに来ました。」と回答すると、自分がハーバードの枠には収まらず、ハーバードよりもケンブリッジが上と暗に示していてウィットに富んだ回答と評価されるかもしれません。いずれの答えにせよ、自分を客観的に評価し明確な根拠を持って真実を伝えていればそれが正解だと思います。
繰り返しになりますが『優秀』という言葉は鼻につく嫌味な言葉ですが、私たちは優秀と認められ評価されたいと心では思っています。高校生の生徒も同様で優秀な生徒になりたいと思っていますし、そう評価されたいと思っています。したがって、「勉強しなさい」という言葉はあまり生徒に響かないのですが、「優秀な学生か無能な学生どちらになりたいのか」と問うと「優秀な学生」と答えますし、パフォーマンスの十分でない生徒に「今、自分がやっていることが優秀な学生のすることですか」と問うとうつむき考え込んでいる生徒もいます。
夏期講習
GRITの夏期講習では単語テストのカンニングをした生徒が1名、翻訳機を使って宿題を解いた生徒が複数名、音読課題の秒数を適当に書いてきた生徒が複数名、単語テストで0点や1点をとった生徒が複数名、英作文で日本語を含めて英作文を書いていたような生徒もいましたし、授業をすっぽかした生徒も複数名いました。主に中学生の生徒で、1,2回で叱ったりはしないのですが3回や4回この手のミスをしている生徒には厳しい話もしました。1名の生徒に「自分の問題を問題と認識できていないことが一番の問題」と話したのですが、GRITの半数近くの生徒は「優秀」とは逆にいる生徒で、根本から改善しなければならない生徒も多いです。
英検2級模試と共通テスト模試
今日の授業では夏期講習の総仕上げとして「英検2級模試(中3生-高2生)」「共通テスト模試(中3生-高3生)」を行いました。共通テスト模試では中3生2名の点数が最も高く、高校生は中学生の生徒に点数で負けていました。英検2級模試でも合格点に達した生徒はおらず情けない結果に終わりました。
英検2級模試
英検2級模試が終わった後に、「この教室から次の英検2級で合格する生徒は0だと思う。もちろん、これから対策を始める中3生と、今回是が非でも合格しなければならない高1生と高2生では状況が異なりますが。」と伝え、「英検まであと1か月半程ありますが、皆さん英検に向けて何か勉強しますか?課題が与えられなければ何も自分でしないのですか?」と伝え、一人ひとり名前を呼んで確認しました。
ほとんどの生徒がうつむき、何か言葉を発しようと口をもごもごしていましたが、「やります。」と答えた生徒がゼロでした。全員の表情から「やると言ってやる自信がない」という気持ちが伝わりました。「受かりたいと思わないなら別にやらなくても構わない。あなた方が結果を出さなくても、隣のクラス(共通テスト模試を受けている生徒)が結果を出してくれる。」「ただ、私は勉強しなさいと言われなくても英検の勉強は自らしていたので受かりたいならなぜやらないか理解できないですが」と厳しいことを話しました。
共通テスト模試
共通テスト模試に関しても受験前から結果はある程度想定できていました。多くの場合で、生徒が私に申告する模試の点数-10%~-20%程度が実際の実力でそれは実際の指導をしていると感じます。生徒が嘘の報告をしているわけではなく、家のリラックスした状態でコーヒーを飲んだりぼちぼちスマホを触りながら解く模試と、時間が測られ飲み物も飲むことができず複数名が同時に受ける模試では緊張感が異なります。ちょっとした音で気が散ったり、周りに人がいるというストレスでも得点は変動します。何名かの生徒が「対策が不十分だった」と話していたのですが、そのような単純な話ではありません。
また、高3生の生徒に対しては「他の教科よりも多少英語が得意だからといって、『英語は大丈夫』という気持ちが少しでも生じていないか。その気持ちが生じた時点で、点数は止まり下がり始める。全ての試験が終わるまで、絶対に慢心してはいけない。」と伝えました。
全て私の責任ですので、今回の結果を受け改善しなければなりません。
英検準1級へ向けて①
少しお話が変わりますが、秋からGRITは新学期で向こう半年分の学習計画を配布しました。
これは中学生の学習計画です。各授業で何を学習するか、明確に決めていますしテストも多いです。
一方でこちらが英検準1級を目指す生徒の学習計画です。学習量もテストの中学生より少なくなっています。
該当の生徒を呼び、なぜ準1級の学習を中学生の学習より少なく設定しているか、確認しました。優秀な生徒でしたら「自分で考えて勉強するように」という意図を受け取ることができるでしょうし、そうでない生徒でしたら「課題やテストが減ってラッキー」と思っているでしょう。以前、別の生徒と似た話をして「他教科の学習が」と話していたので「英検準1級の対策が始まれば、他教科の学習時間も英語の学習時間も両方増やせばいいんです。普通のことです」というやり取りもありました。
英検準1級へ向けて②
1名の生徒が英作文を書いていて、「目先の利益」という表現が出てこずに悩んでいました。私も3秒程悩みましたがすぐ答えは出てきました。周りにいた生徒を巻き込み「目先の利益」を英語でどう書くか考えさせました。
まずは「目先」という日本語を英語で書くことは難しいので「目先」という日本語を別の日本語に置き換える必要があります。その時点で1名の生徒が”recent”と答えたので、「recentは過去形/現在完了形と一緒に使うでしょう。目先は先のことだから逆ですよ。あえて間違っている単語を言いますが感覚的には"forward(前へ)"の方が近いです。」とヒントを与えました。それで答えが出なかったので「『利益』を表す"profit"から連想できませんか」とヒントを与えました。最後に、「ハートで感じてください」と少し投げやりなヒントを与えましたが、「ハートで感じる感覚」は非常に重要です。最終的には1名の生徒がprompt(即座の)という単語を答えましたがそれが非常に惜しかったです。prompt response(即座の対応)のような形ではよく使いますので単語の相性の問題ですね。正解は"immediate profit"でした。
英検準1級へ向けて③
同じ生徒の英作文ですが、「人々は目先の利益を追求する傾向がある」という英文をどのように書くかという話になりました。英検2級の英作文ですと"People always think about the immediate profit."そのような簡単な単語を用いて書くこともできるのですが、英検準1級や1級の英作文ですとそのような英文を求められていませんしそう書くと私はその英作文を受け取らない可能性もあります。
ディスカッションをしながら、pursue(追求する)、英検準1級レベルのbe inclined to(~する傾向がある)、tend to(~する傾向がある)、そして1級レベルのbe apt to(~しがちである)、それぞれの表現のニュアンスなどを説明し"People are inclined to pursue the immediate profit."という英文を完成させました。少し前に否定表現を勉強していたので否定表現を用いて"People do nothing but pursue the immediate profit."という文も紹介しました。「2級レベルの単語の意味やスペルは知っているのが当然で、ニュアンスを理解し使いこなせるようになる。これが英検準1級に向けた学習ですよ。」「普段、英作文の指導で力を出し過ぎると生徒から引かれるのでなかなか力を出せないのですが今日は30%程出すことができました。楽しかったです。」と付け加えました。
優秀な生徒へ
別の生徒ですが、定期テストの点数が高いと親からお金をもらっていると話している生徒もいたので「論外だろう」と話しました。私自身、中学時代は主要5教科に関してはほぼオール5で英語に関しては3年間の平均点が96.5点でした。したがってすべてのテストの2-3割は100点で90点以下を取ったことは一度もありませんでした。が、「高い点数を取ってお金を欲しいと思ったこともなければ、褒められたいと思ったこともない。なぜなら自分の意志で上を目指していたから。今もお金を稼ぎたいという気持ちよりも生徒と自身の学問の追求への気持ちが遥かに上回っている。」と話しました。
別の生徒ですが、大学の推薦を考えている生徒で「推薦は普段頑張ってきた生徒へのご褒美のような側面がある。」と認めながらも、「推薦に過度に期待してはいけない。共通テストでも2次試験でも圧倒的に合格できる力を身につけておかなければならない。」と話した生徒もいました。
そして、何名かの生徒に対し「私たちは、定期テストや入試だけを目標に勉強しているわけではない。大学受験は大きな目標の1つですが、最終ゴールではない。大学生になっても学生は続きますし、しっかり学んでいれば将来多くの人々の力になることができます。」ということを伝えました。これが、スティーヴ・ジョブズ課題の本質だったかもしれません。
生徒の皆さんも多くのことを学ぶことができた課題だっただろうと思います。