中学受験vs英検準1級
先週、生徒が中学受験時の塾かGRITの学習のどちらが厳しいかという話をしていました。長くGRITに在籍している生徒は「GRIT」と話していて、比較的最近入塾した生徒は「中学受験」と話していました。別の生徒も「中学受験に戻ったみたいです」と話している生徒がいるので、皆大変な思いをしながら頑張ってくれています。
今までそのような着眼点を持ったことがなかったので少し考えてみたのですが、英検準1級に合格できる生徒数は和歌山の私立高校で3-7%程度ではないかと思います。1学年200名生徒がいても高3の卒業時に英検準1級に合格できる生徒は多くて10-15名、実際には7,8名程度ではないかと思います。学年によっては1,2名1級に合格できる生徒がいるかもしれませんね。
そう考えるとおそらく合格者数や取得率という点では「中学受験」と「英検準1級」は比べ物にならない程英検準1級の方が低いので、中学受験の際の塾よりもGRITの学習が大変と感じるのは当然かもしれません。そうでなければ準1級合格など夢のまた夢です。
英検準1級の難しさ
個人的には英検準1級は「神格化されすぎでは?」と感じることもあります。私は社会人1年目で準1級に合格しましたが、平日の仕事終わりに2,3時間、休日は休日出勤がなければ10時間程英語学習をしていてそれが普通だと思っていました。英検準1級や1級を目指している生徒がなぜやらないのか、理解に苦しみます。
学生時代も同じで例えば中学時代に部活動(サッカー)をしていて、平日は2-3時間練習をして週末は土日それぞれで7-8時間程ずつ時間を拘束されるのは当たり前でした。
中2の頃の写真です。
それが社会人になって「英語に変わっただけ」のことで特別なことではありません。何かができるようになるためには時間をかけるのは当たり前のことです。
さて、そのサッカー関連ですが、現在冬の選手権の地方大会の決勝戦が日本各地で行われています。JFAのデータでは2023年度、高校生のサッカー競技人口は約150,000人とのことです。1チーム約100名と仮定し47都道府県から1校出場する場合、全国大会に出場できる高校生は約4700人、高校生のサッカー競技人口の約3%です。
日本全国の高校生の数は約3,000,000人。すべての高校が進学校というわけではありませんので進学校を1/4と仮定した場合、進学校に通っている生徒数は約750,000人。英検が公式に発表しているデータが2016年度が最後になりますので状況は少し変わっているかもしれませんが、2016年度の英検準1級合格者は約10,000人でそのうちの約15%が高校生で高校生の合格者数は約1,500人でした。したがって英検準1級に合格できる高校生の割合は進学校に通う約750,000人の生徒の約0.2%に過ぎません。SCBTの実施で高校生の受験生が増えているとは思いますがそれでもせいぜい1%程ではないかと思います。
したがって高校生で英検準1級に合格できるのは数字上では高校サッカー選手権での全国出場と同じ水準で難しく、進学校に通う学生の(多くても)1-2%です。数字上では途方もないように感じますが、先ほどもお話したように毎日2,3時間、休日10時間程勉強すれば普通に合格することはできます。
なぜGRITで合格できるか
さすがに開校初年~2年は準1級合格者を出すことがほとんどできませんでしたが3年目以降は年に1,2名は英検準1級に合格しています。今後、合格者は少しずつ増えるだろうと思っています。実際には準1級を志望した生徒が十分な時間対策を行った上での合否の状況は50/50、若干ですが合格者の方が多いかなと感じるので60/40程で全員を合格させられているわけではありません。
その中でも100%の合格率を目指し、日々考え、試行錯誤を繰り返し、少しずつ前に進んでいます。
まず2級の合格の仕方は非常に重要だと思っています。2級に合格した学生の中には「なんとなく合格してしまった」という生徒もいると思います。単語力が十分でない、英作文やリスニングなど極端に苦手なスキルが残っている、そのような状態でも2級は合格する可能性があります。その合格は英検準1級合格を遠ざける遠因になるのでそのような合格をさせません。
単語と4技能(リーディング・リスニング・ライティング・スピーキング)それぞれが2級で求められる力に達している状態で合格することを目標に学習を進めています。もし技能間にばらつきがある状態で合格した場合、例えば今回2級の1次試験に合格した生徒がいるのですが、英作文の力がまだ2級合格に求められる力には達していないと感じているので、2級の英作文の追課題を与えています。今回準2級の1次試験に合格した生徒に対しても冬期講習で「もう1度英検準2級の英作文の学習を行います」と伝えています。
そして2級に合格後、すぐに準1級の学習に取り掛かるのではなく準1級の単語帳を始める前に2冊英検準2級~準1級準備レベルの単語帳を使用しています。また、すぐに準1級の過去問を始めるのではなく英検2級よりやや難度の高い共通テストの学習を取り入れていますが、1周目は入門レベルの教材、2周目はハーフ模試、3周目はフル模試と強度を上げながら、2級~準1級で比較的難度の差が狭いライティングから順に英検準1級の学習に移行します。前半8か月程の準備の後、英検準1級の単語帳と過去問の学習を始め後半8か月内に合格を目指します。
GRITの学習の性質上、おそらく準1級を志望した全員の生徒が「単語/長文/スピーキング」に関しては合格点を超えています。最後の障壁が「リスニング」、そして英作文の「語彙」です。英作文の語彙に関してはPrismやReading and Vocabulary Focusという教材を用いてほぼオールイングリッシュ、マンツーマンで指導を行っています。
おそらく独学ではここまできめ細やかな学習を行うこともできませんし、技能間に差が生じ、不合格が続いたりうまく学習が進まない中で挫折する生徒もいると思いますので、高校生の英検準1級の力になりたいという気持ちが強いです。
英検1級の難しさ
中には英検1級を目指している生徒もいます。1名の生徒が「とりあえず1級はとっておきたい」と話していたので、「1級はとりあえずで取れる程甘いものではない。人生をかけて勝負する覚悟があるか。GRITに骨をうずめる覚悟があるか。」と少し強めの口調で伝えました。そして「無理に1級を目指す必要はない」ということも伝えました。
1級に合格した生徒は過去に1名いましたが、「100の精神力」「100の体力」「100の知力」を掛け合わせたような生徒でした。英語力が高かったかと言われるとそうでもなかったのですが、1日7-8時間単語の勉強を続けることのできる体力、1点差で英検1級に不合格を経験しているのですが1度授業を休んだだけでその後すぐに立ち直ることのできる精神力、「38度は微熱」「ウィルスは情熱で滅菌」「毛細血管が切れるまで単語を書く」「右手が疲れたら左手を使う」「次に1級不合格だったらスマホを解約させる」「台風の風より我々に吹いている追い風の方が強い」など私の無茶振りに応えようとする素直さ、その素直さゆえに教えたことを吸収し英作文の CSEスコアは1年間で200点アップしました。(1技能のCSEスコアでここまで上げられる生徒はこの先出てこないかもしれません。)
1級は「スマートさ」「理論」「確率」は関係ありません。多少関係あるかもしませんが、関係ないということにしています。高校生活をかけて無茶苦茶に勉強している生徒の姿を見るのは楽しく熱かったです。「スマート」というよりは良い意味で「馬鹿」になって学ぶ方が1級合格の可能性は高いだろうと思っています。