今回は和歌山県立医科大学(2013年度)和文英訳の問題を解きました。解説が長くなりましたが解説が長いということは相当難しいということです。どういった点に留意し英文を書けば良いか、市販の教材よりも詳しい解説になっていると思いますのでぜひ参考にしてください。
問題
- (1)上下関係を大切にする日本社会において、外国から来た人が戸惑うことの一つに、日本人は極めて控えめ目に自己をPRすることがあげられる。
- (2)人と人との付き合いにおいて、常に自分を人の下に置いてへりくだったものの言い方をする人を、日本では謙虚な人として尊敬する。
- (3)それは不思議なことに、上の立場の人にも言えることで、下の立場の人が敬意を表した場合、それに応えるかのように相手に丁寧にできる人を日本人は尊敬する。
実際に書いた英文
- (1)In Japanese society, where it is taken for granted that the younger show respect to the older, one thing that often confuses people from overseas is that Japanese people express themselves in an extremely discreet way.
- (2)When they speak, those who place themselves in lower positions and speak humbly are respected as modest.
- (3)Strangely, that is true for people in higher positions. They are respected if they behave politely when their subordinates show loyalty.
(1)
- 「上下関係を大切にする」 ⇒ "hierarchy(ヒエラルキー)"という単語がファーストチョイスだがスペルの自信がなく、また「階層性」のようなイメージもあるので今回は却下。上下関係を大切にする社会ということは基本的には「若者が年長者に対して尊敬を示すことが当然と考えられている社会」と言い換えることができるので”it is taken for granted that the younger show respect to the older”を選択。 the+形容詞で「~な人々」 また形容詞を比較級にすることで「若年者」「年長者」のように丁寧なニュアンスをもたせている。
- 「外国から来た人々」 ⇒ 様々な言い方があるが今回は"people from overseas"を選択。解説する程の表現ではないがこの表現の文法的イレギュラーに気づくか。fromは前置詞なのでfromの後に続くのは名詞。overseasは「海外で」という意味の副詞なので"from overseas"は「名詞+副詞」が続くイレギュラーな表現。
- 「極めて控えめに」 ⇒ 今回の英作文の最大のポイント。「控えめ」「謙虚」「へりくだって」と似た表現が3つ出てきている。この3つをニュアンスの違いに注意し、別の単語を使って書くことができれば他の受験者と差をつけられる。まず「控えめに物を言う」の控えめは「思慮深い、慎重な」というニュアンスが含まれるので"discreet"を選択。
- 「自己をPRする」 ⇒ そもそも「控えめに自己をPRする」という表現が矛盾しているようにも感じる。控えめな人は自己をPRなどしない。そもそも「自己をPRとは何か?」「自己紹介なのか。」控えめに自己紹介など状況が掴めない。したがって自己をPRするとは「自分自身を表現する」と解釈し"express themselves"を選択。模範解答は"present themselves"となっていたが「動詞+oneself」を用いた表現が適切だろう。
(2)
- 「人と人との付き合いにおいて」 ⇒ ファーストチョイスは"personal relationship" 今回に関しては後の文脈から、「人と人が話をするとき」と解釈し意味は十分通じるので"When they speak( talk )"を選択。
- 「自分を人の下に置く」 ⇒ 今回の英作文で最も難しい部分だろう。他の日本語で言い換えることが難しく英語で直訳してよいものだろうか。「置く」のファーストチョイスはput。"put themselves in lower positions"間違いではないが、"place(場所を移す)"の方がニュアンスが伝わると感じ"place themselves in lower positions"を選択。
- 「へりくだって」 ⇒ ざっくり言えば「謙虚に」ということだがややネガティヴなニュアンスも含まれる。準1級の英単語帳に"modest""humble"と2つ「謙虚な」という意味の単語が出てきて「違いが何ですか?」と質問されたことがあった。"humble"はもともと"humiliate(恥をかかせる)"という単語でそこから生じた語。ですのでmodestとhumbleは日本語では同じように見えるがhumbleはおべっかを使っているようなニュアンスを感じる。したがって今回は"humble"を選択。
- 「謙虚な人として尊敬される」 ⇒ 「~として」は"as"で他の選択肢がない。"as a modest person"と書くこともできなくはないが少し冗長に感じる。したがって"be respected as modest"を選択。ただ、これも文法的にはイレギュラー。asは前置詞なので後に名詞が来なければならないがmodestは形容詞。「前置詞+形容詞」が続くイレギュラーな表現と理解しておく必要はある。
(3)
- 「ふしぎなことに」 ⇒ "strangly"だけで十分。
- 「~に対しても言える」 ⇒ 「~にも当てはまる」と解釈し"be true for(of)"を選択。「~にも当てはまる」は"the same thing""applicable""case"など様々な単語を用いて似た意味の文を書くことができる。
- 「敬意を表した場合」 ⇒ "show respectがファーストチョイスだが1文目で使っているので"show loyalty(忠誠を示す)"を選択。
- 「丁寧にできる人」 ⇒ 「丁寧にできる人」は日本語的な表現なので自分なりに解釈し語を加えなければならない。「丁寧にできる」は「丁寧に振る舞う」と解釈できるので"behave politely"を選択。一見簡単そうに見えるが、behaveはなかなか出てこないだろう。